マンジャロ(チルゼパチド)と並んで議論される GLP-1 関連薬剤は複数あり、それぞれ作用機序・国内承認状況・投与方法・適応に違いがあります。本記事では主要薬剤を添付文書ベースで比較し、選択時の論点を整理します。
この記事でわかること:
- GLP-1 関連薬剤の全体像と分類
- マンジャロを含む主要6薬剤の早見表
- 注射剤と経口剤の違い
- 治療選択における考え方
GLP-1 関連薬剤の全体像

GLP-1 関連薬剤は、消化管ホルモンである GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)の受容体に作用してインスリン分泌促進・食欲調節を行う医薬品群です。マンジャロはさらに GIP 受容体にも作用する「デュアル作動薬」で、従来の GLP-1 単独作動薬とは作用メカニズムが異なります。
マンジャロの作用機序の詳細はマンジャロとは?作用機序と承認状況をご覧ください。
主要6薬剤の早見表

| 薬剤 | 一般名 | 作用 | 投与 | 国内承認効能 |
|---|---|---|---|---|
| マンジャロ | チルゼパチド | GIP/GLP-1 | 週1回 注射 | 2型糖尿病 |
| オゼンピック | セマグルチド | GLP-1 | 週1回 注射 | 2型糖尿病 |
| ウゴービ | セマグルチド | GLP-1 | 週1回 注射 | 肥満症 |
| サクセンダ | リラグルチド | GLP-1 | 1日1回 注射 | 日本未承認(海外で肥満症) |
| ビクトーザ | リラグルチド | GLP-1 | 1日1回 注射 | 2型糖尿病 |
| リベルサス | セマグルチド | GLP-1 | 1日1回 経口 | 2型糖尿病 |
マンジャロ vs オゼンピック

マンジャロとオゼンピックは、いずれも週1回の注射薬で2型糖尿病の効能で承認されています。最大の違いは作用機序(GIP/GLP-1 デュアル vs GLP-1 単独)です。臨床試験で報告されている効果データと、副作用プロファイルの違いをマンジャロとオゼンピックの違いで詳しく整理しています。
マンジャロ vs ウゴービ
ウゴービはセマグルチド成分の肥満症で日本国内承認を受けた製品です(一定の BMI 等条件あり)。一方マンジャロは2型糖尿病のみの承認で、肥満治療目的では適応外使用となります。詳細はマンジャロとウゴービの違い|国内承認に注目をご覧ください。
マンジャロ vs サクセンダ
サクセンダはリラグルチド成分の海外で肥満症承認製剤ですが、日本では未承認です。日本国内で処方を受ける場合は個人輸入か未承認薬の自由診療となり、安全性・救済制度・偽造品リスクなど複数の問題があります。詳細はマンジャロとサクセンダの違いとマンジャロの個人輸入は危険をご覧ください。
マンジャロ vs リベルサス
リベルサスはセマグルチドの経口剤(飲み薬)で、注射が苦手な方にとって選択肢となります。ただし吸収条件(空腹時・水のみ・服用後30分の食事制限)があり、用法はやや厳格です。詳細はマンジャロとリベルサスの違い|注射 vs 経口をご覧ください。
マンジャロ vs ビクトーザ
ビクトーザは1日1回投与のリラグルチド製剤で、糖尿病治療として長年使用されてきた実績があります。マンジャロとの違いは投与頻度(毎日 vs 週1回)と作用機序(GLP-1 単独 vs GIP/GLP-1 デュアル)です。長く使われている薬剤に対する信頼を取るか、新しい作用機序を取るかは、医師との相談で決めます。
注射剤と経口剤の選び方
剤形による違いを整理します。
- 週1回注射(マンジャロ/オゼンピック/ウゴービ):頻度が低く、忘れにくい。注射の手技が必要
- 1日1回注射(ビクトーザ):毎日打つ手間と、用量微調整がしやすい利点
- 経口(リベルサス):注射不要、ただし服用条件の厳守が必要
治療選択における考え方
「どれが最も良いか」は患者ごとに異なります。医師は以下のような要素を考慮して判断します。
- 病態(糖尿病の進行度・合併症・他疾患の有無)
- 他薬剤への過去の反応・副作用歴
- 注射への忌避感の有無
- 費用負担(保険適用 vs 自由診療)
- 通院頻度の許容範囲
自己判断ではなく、医療機関での診察を受けてください。提携医療機関「おうちでクリニック」では、複数の選択肢を踏まえた相談が可能です。
よくある質問
Q. 切り替えはできますか?
切替自体は医師の判断で可能です。ただし用量設計・休薬期間・副作用歴を考慮した処方計画が必要です。
Q. 併用できる薬剤はありますか?
同じ作用カテゴリ(GLP-1 系)の薬剤同士の併用は原則推奨されません。他カテゴリの糖尿病治療薬(メトホルミン・SGLT2阻害薬等)との併用は症例により行われます。詳細は処方医にご相談ください。
Q. 個人輸入で他薬剤を試すのは大丈夫?
偽造品リスク・健康被害救済制度対象外などの問題があり、推奨できません。詳細はマンジャロの個人輸入は危険をご覧ください。
まとめ
GLP-1 関連薬剤には複数の選択肢があり、作用機序・剤形・投与頻度・国内承認効能が異なります。マンジャロは GIP/GLP-1 デュアル作動という比較的新しいクラスで、2型糖尿病の効能で承認されています。肥満治療目的の使用は適応外(自由診療)に該当します。
治療を検討される方は、医師の診察にもとづき自分に適した薬剤を判断してください。
GLP-1受容体作動薬の種類と特徴一覧
現在日本で使用可能な主なGLP-1受容体作動薬(およびGIP/GLP-1受容体作動薬)の比較を以下にまとめます。
| 製品名 | 一般名 | 作用機序 | 投与方法 | 投与頻度 | 主な適応 |
|---|---|---|---|---|---|
| マンジャロ | チルゼパチド | GIP/GLP-1二重受容体作動薬 | 皮下注射 | 週1回 | 2型糖尿病 |
| オゼンピック | セマグルチド | GLP-1受容体作動薬 | 皮下注射 | 週1回 | 2型糖尿病 |
| ウゴービ | セマグルチド | GLP-1受容体作動薬 | 皮下注射 | 週1回 | 肥満症 |
| リベルサス | セマグルチド | GLP-1受容体作動薬 | 経口 | 毎日 | 2型糖尿病 |
| ビクトーザ | リラグルチド | GLP-1受容体作動薬 | 皮下注射 | 毎日 | 2型糖尿病 |
| サクセンダ | リラグルチド | GLP-1受容体作動薬 | 皮下注射 | 毎日 | 肥満症 |
| トルリシティ | デュラグルチド | GLP-1受容体作動薬 | 皮下注射 | 週1回 | 2型糖尿病 |
マンジャロの二重受容体作動メカニズム
マンジャロ(チルゼパチド)が他のGLP-1受容体作動薬と根本的に異なるのは、GIPとGLP-1の2つの受容体に同時に作用する点です。
GLP-1受容体への作用(従来のGLP-1薬と共通)
- 膵臓からのインスリン分泌を血糖依存的に促進
- グルカゴン分泌を抑制(血糖値の上昇を抑える)
- 胃排出速度を遅くする(満腹感の持続)
- 脳の食欲中枢に作用し食欲を抑制
GIP受容体への作用(マンジャロ特有)
- インスリン分泌をさらに増強(GLP-1と相乗効果)
- 脂肪組織での脂肪分解を促進する可能性
- 脳における食欲抑制効果をさらに強化
- エネルギー消費を増加させる可能性
この二重作用により、マンジャロはGLP-1単独作動薬と比較して、より大きな血糖降下効果と体重減少効果を示す可能性があるとされています。
臨床試験での直接比較データ
SURPASS-2試験では、マンジャロとセマグルチド(オゼンピック)1mgが直接比較されました。
| 評価項目 | マンジャロ 5mg | マンジャロ 10mg | マンジャロ 15mg | セマグルチド 1mg |
|---|---|---|---|---|
| HbA1c低下 | -2.01% | -2.24% | -2.30% | -1.86% |
| 体重減少 | -7.6kg | -9.3kg | -11.2kg | -5.7kg |
| HbA1c<7%達成率 | 85% | 89% | 92% | 81% |
| 体重5%以上減少率 | 55% | 66% | 72% | 42% |
※40週時点のデータ。すべてのマンジャロ群がセマグルチド群に対して統計学的に有意な差を示しました。
肥満治療としての比較(SURMOUNT vs STEP試験)
| 評価項目 | マンジャロ15mg(SURMOUNT-1) | セマグルチド2.4mg(STEP-1) |
|---|---|---|
| 対象 | BMI≧30(または≧27+合併症) | BMI≧30(または≧27+合併症) |
| 試験期間 | 72週 | 68週 |
| 平均体重減少率 | -22.5% | -14.9% |
| 平均体重減少量 | 約-24kg | 約-15kg |
| 体重10%以上減少率 | 約79% | 約69% |
| 体重20%以上減少率 | 約55% | 約32% |
※異なる試験間の間接比較であり、厳密な優劣は直接比較試験でしか判断できません。参考データとしてお読みください。
副作用プロファイルの比較
| 副作用 | マンジャロ | セマグルチド | リラグルチド | デュラグルチド |
|---|---|---|---|---|
| 悪心(吐き気) | 12〜22% | 15〜20% | 20〜40% | 10〜15% |
| 下痢 | 12〜17% | 8〜12% | 10〜15% | 8〜12% |
| 便秘 | 6〜9% | 5〜8% | 5〜10% | 4〜6% |
| 嘔吐 | 4〜10% | 5〜10% | 5〜15% | 3〜6% |
| 低血糖(単独使用) | 低い | 低い | 低い | 低い |
| 膵炎リスク | 稀に報告 | 稀に報告 | 稀に報告 | 稀に報告 |
| 投与部位反応 | 3〜5% | 1〜3% | 5〜15% | 2〜5% |
消化器系副作用の全体的な発生率は各薬剤で類似していますが、マンジャロは下痢の報告がやや多い傾向があります。一方、日次投与のリラグルチドは毎日の吐き気を感じやすいとの報告もあります。
どの薬剤が向いているか
| こんな方に | おすすめの薬剤 | 理由 |
|---|---|---|
| 最大限の体重減少を求める方 | マンジャロ | 二重受容体作動による強い減量効果 |
| 注射に抵抗がある方 | リベルサス(経口セマグルチド) | 唯一の経口GLP-1受容体作動薬 |
| 肥満症の保険適用を受けたい方 | ウゴービ | 日本で肥満症に保険適用 |
| 2型糖尿病の治療が主目的の方 | マンジャロまたはオゼンピック | HbA1c改善効果が高い |
| すでに他のGLP-1薬を使用中の方 | 処方医に相談 | 切り替えのタイミングと方法は個別に判断 |
よくある質問(追加)
Q. マンジャロから他のGLP-1薬に切り替えることはできますか?
処方医の判断により切り替えは可能です。副作用や効果の面からマンジャロが合わない場合、セマグルチドやリラグルチドなどへの切り替えが検討されることがあります。切り替え時の用量調整は医師の指示に従ってください。
Q. GLP-1受容体作動薬は長期間使い続けても安全ですか?
現時点での臨床試験データ(最長約2年)では、重大な安全性の懸念は報告されていません。ただし、より長期の安全性データはまだ蓄積中です。定期的な検査と経過観察を受けることが推奨されます。
Q. マンジャロとオゼンピックの一番の違いは?
最大の違いは作用機序です。オゼンピックはGLP-1受容体のみに作用するのに対し、マンジャロはGIPとGLP-1の二重受容体に作用します。臨床データ上はマンジャロの方がHbA1c低下・体重減少ともに大きな効果を示していますが、個人の反応には差があります。
Q. 複数のGLP-1受容体作動薬を併用できますか?
GLP-1受容体作動薬同士の併用は推奨されていません。作用機序が重複するため、副作用リスクが増加する可能性があります。薬剤の変更は切り替え(スイッチ)で対応します。